「事業主借」と「事業主貸」は、事業主への現金清算や振替をする必要はあるのでしょうか?
結論をいえば、ありません。
「事業主借」は、元入金(資産)に個人資金を追加しただけです。
それを経費支払いに当てたということです。
元入金の金額が増大し、経費も同じ金額だけ増大したというだけのことです。
一年間の決算をしたときに、「事業主借」と「事業主貸」の差額分が元入金(資産)に反映されます。
ただ、損益管理の観点からいうと、個人的には好ましくないと思っています。
例え話をすると、FXで評価損失が膨らみロスカットになりそうになったときに、追加入金するケースを考えてみてください。
総資産額は入金した分だけ増大しますが、評価損失はそのままです。
この状態を儲かったとはいいません。
FXにおけるロスカット回避目的の追加入金は、破滅への道であることは周知のとおりです。一時的な鎮静剤にすぎず、損益管理を曖昧にし、損失の野放図な増大に拍車をかけます。
最初、私はこの「事業主借」を多用していました。
「自分の財布からお金をだして購入した経費は事業主借という勘定科目を使う」とあるサイトに書いてあったからです。
その時は、簿記も勉強し始めたばかりで、意味もわからず、やよいの青色申告の入力ができればそれでよいという感覚でした。
しかし、自分の生活費と事業用の資金の管理がわかりにくくなり、事業資金額が増えているのに、儲かっていないという不自然な状態になりました。
それで「事業主借」の使用をやめ、領収書をもらったら「現金」勘定で入力するようにしました。もちろん手元に事業用の現金をプールし、そこから自分の財布に清算します。
「事業主貸」は生活費の引き出しなので、生きるために使わないわけにはいきません。生活費は純利益の範囲で引き出さなければいけません。
そうでないと、資産が減少していき、最後は事業停止となります。
「事業主借」と「事業主貸」をその都度、あるいは毎月清算・振替することで、正確な資産状況を知ることができ、損益管理ができます。
元々、複式簿記は、損益を正確に知るために開発されたものです。
単なる「節税」でやっているのなら話は別ですが、自分が利益の出る、独立した生計の立てられる事業をしているのかどうか、常に把握するべきです。