今持っているクレジットカードを作ったのは12年以上前だ。
その時の銀行系カードは全て年会費が必要だった。
その銀行は大手都市銀行と合併して、提携クレジットカードも大きく変わっていた。セゾンカードとか銀行グループのシンプルなクレジットカードであれば、年会費無料になっていた。
インターネットのダイレクト口座から申し込みができるようになっていたので、さっそく申し込んだ。新しいクレジットカードが届いたら、支払いは全て切り替えて、今のものは廃止するつもりだ。
今はクレジットカードが1枚なので、事業用と私用を混在して使用している。
別の銀行に私用の口座を作り、私用クレジットカードも作ることにした。
私の場合、コンビニATMでの引き出しが多いので、引き出し手数料が無料になるものを探した。
地元の地方銀行は給与振込みや公共料金の引き落としをしないと、手数料が無料にならない。優遇ポイントをクリアするのが難しい。
三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行などの大手都市銀行は、口座残高だけクリアしていれば、無料にしてくれるようだ。これは企業体力の差なのだろう。
私の住む町には、みずほ銀行しか近くにないので、必然的にみずほ銀行にすることになった。クレジットカードも年会費無料のものがあるので、文句のつけようがない。
現在は兼業だが、サラリーマンでなくなるとクレジットカードを作るのが難しいので、今のうちに作っておいたほうがよいという打算もある。
祖母の調子が悪いという嘘をついて、有給休暇をもらった。
私の勤める会社は有給申請に「私用のため」と書くと、許可されない。必ずどこに旅行に行くとか社会保険の手続きに行くとか、具体的な内容を書かねばならない。
これは申請をチェックする、会長の同級生だったというコネで入社した総務部長の「趣味」らしい。迷惑な話だが、それを知っていて放置している会社もどうかしている。
みずほ銀行で新規口座開設とクレジットカードの申請をした。
クレジットカードは、セゾンカードがみずほ銀行グループとのことで、セゾンJCBにした。キャッシュカード一体型になるという。便利なのかどうかわからないが、特に問題ないだろう。
平日なので、客が少ない。
車椅子のおばあさんとヘルパー(ケアマネージャー?)さんの声が響いていた。
「なんで別の人の名前を書くの?」怒りを抑えているが、きつい口調だった。
「あなたは、xx子さんでしょう」
おばあさんが、ぼそぼそと答える。
「xx子は、病気ばっかりしてダメだから、名前をかくといけないことが起こる・・・」
「芸名じゃないんだから、そんなことをしては駄目!!銀行で嘘の名前を書いたら大変なことになるの。わかる?」
「xx子は病気して、頭が悪いから・・・」おばあさんは同じことを繰り返し答えていた。
本人名義の口座から生活費を引き出すのだろうか。家族でない第三者のケアスタッフでは代理手続きができないのだろう。
私の名前が呼ばれた。
預金通帳とインターネットのダイレクト口座のIDとパスワードを受け取った。2日後に利用できるとのこと。
クレジットカードは、勤め先での私の所在確認ができたら2週間程度で発行してくれるらしい。
ボールペンとポケットティッシュ2個をおまけでくれた。
席を立って、出口に向かった。
おばあさんはまた、書類に別の人の名前を書いているようだ。
ケアスタッフの 悲壮な声が背中から聞こえてきた。