若い同僚が遠慮がちに相談してきた。
どうしても再生できない動画ファイルがあるということだった。
ある特定の動画ファイルだけが、「再生中に問題が発生しました」というメッセージが表示されるらしい。
動画ファイルが壊れているのだろうと言ったが、パソコンを買い替えるまでは再生できたという。
そういうときは、以前と同じ動作環境にするための追加インストールが不足していることがほとんどだ。
再生プレーヤーのコーデックが不足しているだけだろうと説明した。
納得していない様子だったが試してみますと言って、その日は引き下がった。
次の日、彼はやっぱりダメだったという。
詳しく話を聞いてみると、彼が買い替えで購入したパソコンはDellの再生パソコンだった。1万5千円だそうだ。
再生パソコン(Refurbished PC)とは、故障で回収したパソコンの正常な部品を集めて組み立て直した製品だ。しかも、再生パソコン用にマイクロソフトが提供している安いWindowsライセンスでシステムインストールしている。
ネットと年賀状印刷しかしない人には、必要充分なスペックを持っている。
こうなると口頭でのやりとりでは私にもわからない。
実機をみないことには何とも言えないと答えた。
また次の日、彼は問題のデスクトップパソコンを持ってきた。
どうしても直してほしいという。
ずうずうしい依頼にイラついたが、本人は何とも思っていないようだ。
会社で個人的な作業をできるわけがない。
怒るのも面倒なので、持ち帰って作業することで了承してもらった。
また「近所のパソコンに詳しいお兄さん」に逆戻りだ。
個人事業の事務所で彼の再生パソコンを起動した。
標準でついているサンプルムービーのWildlife.wmvは問題なく再生できる
再生プレーヤーには問題ない。
問題の動画ファイルをダブルクリックすると、彼の言う通り「再生中に問題が発生しました」というメッセージが表示された。
”Windows Media Player”と”再生中に問題”というキーワードでネット検索すると、すぐに原因が判明した。
DMMからダウンロードしたファイルが、再生できないケースがあるらしい。
さらに調べてみると、DMMはマイクロソフトのDRMという著作権保護機能を利用していて、Windows以外では再生できなくなっている。
私は知らなかったが、DMMは家族に内緒で楽しむためのダウンロードサイトだった。
(テレビCMでやっているように証券会社だと思っていた)
LinuxやMacでDMMを再生したいという熱い議論がネット上の男性同士で交わされていた。
もともと再生にはIDとパスワードが必要なのだが、DRMはシステム内部で個々のパソコンのハードウェア情報(メインボードかCPUを識別する情報)を保存しているらしい。
おそらく再生パソコンはコストを抑えるため、システムをインストールしたハードディスクを丸ごとコピーしているのだろう。(そういうツールも市販されている)
著作権をチェックするための情報にハードウェア固有の情報を使用するため、実際に動作しているハードウェアと、システムデータとして保持しているハードウェア情報に相違があるため再生エラーとなるのだろう。
対処法はすでに公開されていた。
システムが保持しているDRMの著作権情報を一度削除する必要がある。
resetDRM.exeという実行ファイルを、マイクロソフトのサイトからダウンロードする。この実行ファイルをファイルのプロパティでWindows7の互換モードに設定してから、「管理者として実行」しなければならない。
上記の手順でDRMの著作権情報を削除した後で、問題の動画ファイルをダブルクリックした。
すると、今度はIDとパスワードを入力する画面が表示された。
おそらくこれで大丈夫だろう。
どんな動画ファイルなのか興味はあったが、私にできることはここまでだ。
後は大人として黙ってパソコンを返すだけだ。(^_^;;;