この間、雑談の中で聞いた話がある。
電気工事や建築の会社は、好景気の時で仕事をたくさん受注していても、倒産することがあるそうだ。
会社全体が息つく間もないほどに忙しく働いていても、ある朝出社するとドアが閉じたままになっている。
社員たちがいつまで待っていても、社長も奥さんも来ないし、連絡も取れない。
債権者が殺到して、やっと倒産という事実を知ることになる。
社員たちは、倒産するなんて夢にも思っていなかったのだ。
こんな前兆の全くない「即死倒産」はなぜ起こるのか?
それは、仕事の報酬は仕事が完了した後に貰えるもので、仕事に必要な経費はそれまで負担しなければならないからだ。
受注した仕事の電気資材や建築資材の代金は、工事を開始する前に入手するわけで、先に支払いをしておかなければならない。
受注金額が大きければ、自然と工事期間も長い。
こういう倒産は個人経営・家族経営の場合に起こりやすい。
残高管理というか、資金調達の計画が杜撰なため、売掛債権があるにもかかわらず「現金」が足りず、「資金がショート」する現象が発生する。
一年間トータルで黒字の計画でも、一瞬でも口座残高がマイナスになる日があれば、「不渡り」になってしまうのだ。
景気がいいからと言って企業の財務体力に見合わない大きな仕事を多く受注すると、大変なことになるという例である。
去年の今ごろの話だが、サラリーマンの方の会社の取引先で、とても忙しそうに仕事をして、沢山商品を買ってくれていた会社があった。
消費税増税前の駆け込み需要のおかげだったのだろうか?
出社すると、その会社が倒産したということで社内が騒然としていた。
担当営業マンが納入済みの商品を回収しに、トラックを調達して飛び出していったのを覚えている。
その会社で働いていた社員たちも全く予想していなかったようだ。
前日も夜遅くまで残業していて、次の朝出社すると銀行が会社を差し押さえていたらしい。
当社の売掛金は数千万円あったらしく、数ヵ月後、営業担当者は「倉庫係」に左遷された。
詳しくは知らないが、大型受注の仕事が延期されたのが致命的だったらしい。
仕入れ材料を早めに返品すれば何とかなったかもしれないが、有限会社なので財務管理が甘かったのか、体面を保ちたかったのか社長が夜逃げしてしまったのでわからない。
当時は、ドラマだけではなく本当に「夜逃げ」があるのだという感想しかなかった。
今は自分も、有限会社より脆弱な「個人事業主」なのだから、仕事の受注の仕方に気をつけていかねばならないと思っている。
年末が近くなって、去年のことを思い出したので、書き留めておく。