週明けの月曜日の夜。
冬の寒さに身を縮めながら事務所に入った。
エアコンをONにし、ポットに水を入れコンセントをつけた。
暖かくなるまでしばらく待つしかない。
パソコンの電源を入れ、起動するまで何も考えず、モニターを眺めていた。
部屋の隅の方で、かすかな気配を感じた。
特に何かがあるわけはなく、床に接着剤のついたシートが置いてあるだけだ。
モニターに視線を戻したが、なんとなく気になって、再び隅の方を見てしまった。
すぐには気付かなかったが、ねずみ捕獲シートに、濃い灰色の大きなシミ状の汚れが
あるのに気付いた。
近視なので、はっきり見ようと椅子を近づけた。
ねずみが2匹へばりついていた。
シートに大の字で密着していて、遠目では気付かなかった。
今日かかったというより、人の気配のない日曜に蠢いていてたのだろう。
どうすればいいのか?
自分では処分する勇気が持てないし、どこに捨てればよいのだろう?
燃えるごみ?
もはや仕事どころではない。
住居の衛生維持管理は、大家の義務だ。
大家さんに電話すると、明日来ると言う。
次の日の夜。
大家さんが事務所の前で待っていた。
勝手に鍵をあけて処分してくれると思っていたが、そういうわけではないようだ。
一緒に部屋に入り、確認してもらった。
大家さんいわく、まだ2匹でシートの接着面に空きがあるから、このまま置いておこうという。
とんでもない。
私が事務所で仕事をしているそばで、苦しそうにへばりついているねずみがいる。
気が散って何も手がつかないし、このままネズミが死ねばひどいにおいがするし、今度は虫がたかるだろう。
表立って文句を言うのは避けることにして、都会育ちの私はこういうのに慣れていないと言った。(いい歳した男としては情けない発言だが)
大家さんはすこし馬鹿にしたような表情をしたが、ぶつぶつ言いながら片付けてくれた。
家賃が安いのがこの事務所のメリットだが、ねずみが跋扈するようになったら、ここを引き払うことも考えなければならない。
電線や光ファイバー線を噛み切られたら大損害になる。
さいとうたかおのマンガで「サバイバル」というマンガがあった。
主人公はねずみに追い詰められて、住処から追い出されるシーンがあった。
私も似たような状況に追い込まれ、事務所を棄てることになるのだろうか?(ToT;;;;
とりあえず、「自費で買った」ネズミ捕獲シートを同じところに置いておいた。