サラリーマンの仕事を定時で切り上げて、すぐに事務所に来た。
夕方6時過ぎ。また人の呼ぶ声がした。
前回は若い刑事さん。その前は、近所のマエダさんに教えられてきたオバサン(名前を聞いていなかった)
今回はいったい誰だろう。
ドアを開けると、私よりメタボ体質な恰幅の良い中年男性がいた。
開口一番、「何度お伺いしてもお留守だったので、やっとお会いできました」と言った。
そりゃそうだ。夜か休日しかいない。
彼は”xxxxx信用組合”の名刺を差し出した。金融機関の営業だった。
名刺には”部長代理”とある、あやしい役職名だ。(^_^;;;
年功序列のポスト不足で昇進できない、勤続年数が長い営業担当者なのだろう。
管理職というより、外回り営業で顧客を囲い込むのが仕事だ。
おそらく日頃から日中営業回りをしているときに、表札やポストなどをチェックしていて、引っ越しや開業・廃業などを調べているのだろう。
私は開業して事務所を持っていることは秘密にしていても、ポストに事務所名は書いている。(郵便が届かなくなってしまうから)
地域密着の金融機関は、足で情報を集めるとは聞いていたが、本当のようだ。
8月に事務所が入ったことを見つけて、何度訪問しても無駄足になっていた。
勤務が終わったあと帰宅途中に覗いてみたら、私が偶然いたということかもしれない。
取引になるとは思ってないだろうが、新規を必ず訪問する熱意はあるようだ。
銀行営業の決まり文句をひととおり聞いた。
融資の必要性の有無。融資のための銀行口座の開設。ローンのご相談についてなど。
冗談で「借金のかたになるものは何もないんだがな~」と私は言った。
彼は年季のはいった愛想笑いをした。
名刺を求めてきたので、努力に報いてあげた。
名刺がたくさん余っていたというのもある。
勤務している会社とは取引のない銀行なので、よほどのことがなければ会社にはばれないだろう。
時間外に訪問したことを何度も詫びるので、こちらもすまない気分になった。
「今は動かせるお金がないので、お金に困るようになったら連絡しますよ」と言った。
そんな人間に用はないだろうが、また深くお辞儀をして帰って行った。
はじめての「金融機関とのお付き合い」であった。(^_^;;;;