この間の連休に、小遣い稼ぎにFX取引をしていたという人と知り合った。
「道の駅」に両親を車で送迎した時に世間話をしただけで、別に名前を名乗りあったわけではない。
買い物に夢中になっている家族を待つ間、お互い暇つぶしの話相手が欲しかっただけだ。
自動販売機の前で、私はブラックコーヒーを、彼はタバコを吸っていた。
長椅子を見つけ隣に座っていいか聞いた時に、相手からどこから来たのか尋ねられたのがきっかけだった。
とりとめのない話をしていたが、景気の話となり、小遣いが少ないという愚痴になった。
FXとか株で小遣い稼ぎをしたらどうかと私が言った。
彼は噴き出すように大きく笑って、「昔FXをやって、痛い目にあった」と答えた。
「ミセス・ワタナベ」が話題になったFX興隆期に、彼もFXを始めた。
最初は小遣い程度は毎月儲けられた。
しかし、リーマン・ショックで大きな含み損をかかえ、決済できずに何年か放置していたらしい。
買いポジションだったので、少しながら毎日スワップ収入にはなっていたからだ。
しかし、日本のFX取引の法改正で大変なことになった。
それまで規制がほとんどなかったFX業界は、それに対応できない中小会社が多かった。
少なくないFX会社が倒産あるいは事業清算した。
彼が口座を持っていたFX会社も事業清算することになった。
当然のことながら、含み損を損失として確定されてしまい、FX会社も損失を補てんしてくれない。
維持証拠金と少しばかりの残高しか手元に残らなかったそうだ。
今まで考えたこともなかったが、FX会社が倒産・事業撤退したとき含み損があれば、損失が確定する。長期で勝負するスワップ収入派も、来年には値上がりすると分かっていても、手の打ちようがない。
そういう意味では、長期で勝負するというのもリスクが高いといえる。
やはり短期売買の方がリスク回避には向いているのかもしれない。
サラリーマンらしい彼に、大きな損失を受けた影は感じられない。
家族が出てくるのを見つけた彼は、挨拶をして立って行った。
安定した生活基盤を持っているのが大きな支えになっているのだろう。
30分ほどして、私の両親がでてきた。
xx名産のお菓子の箱を押しつけられた。
会社の人のお土産にしろという。人の意見もきかずに勝手に買ったのだ。
田舎の年寄りは余計な気をまわす。
サラリーマンを辞めたいんだがなと思いながら、素直に頷いて受け取った。