以前、知り合いの社長さんから電気工事会社を事務所込みで買い取る話をいただいたことがあった。
さすがに今から電気工事の勉強をする気もないし、提示額も予定予算より大幅に高かったので、菓子を持って断りに伺った。
社長さんもそれほど期待はしていなかったらしく、あっさり引き下がった。
しかし、攻め手を変えてきて、事務所だけでも購入するよういわれた。
自治体の補助を活用すれば大丈夫とも言われたが、数十万円程度では二ヶ月分の運転資金が浮くに過ぎない。(詳しく調べていないので後日調査したいと思うが)
長期的に考えれば、家賃を気にしなくていいので楽になるだろうが、事業開始から運転資金がショートしたら元も子もない。
「不動産を持っていれば銀行や取引先に大きな信用になる。最初俺の事務所を賃貸だと思っていたメーカーが、所有だとわかったとたん百万円の仕入れの売掛をしてくれるようになった。信用力は事業のいろいろなところでメリットがある。それにだな。事業が採算にのらず一時撤退をしたときでも、実家に自分の事務所を移して、人に貸せばいいじゃないか。そうすれば賃貸収入になる。月々の不動産収入になるんだぞ。賃貸した事務所だったら、どこまでいっても不毛な経費でしかない」
頭をガツンと殴られたような気がした。そんな発想は持ったことがなかった。
そういえば本屋で、警備員をしながらアパート経営をして資産を築いた人の本を見かけた。そんなうまい話はないと馬鹿にしていたが、自宅でネット事業をして、同時に不動産収入が入れば、次の事業の再起までの時間を短縮できる。
言葉が出ずに絶句していると、かなりイライラした感じで、同じことを繰り返し言われた。(電気工事関係は元々ガラが悪いのだが)
社長さんにしてみれば、当たり前の考え方なのかもしれない。
こういうときに自分の経験不足というか、サラリーマン的発想から抜け出せない自分の限界を思い知らされる。
もちろん、自分の会社を売りたいという下心はあるのだろうが、発想の転換を誘うきっかけを与えてくれる貴重な人だ。
すぐに答えを出す必要はないが、検討に値することは確かだ。